脊髄損傷とリハビリについて

概要

脊髄損傷(せきずいそんしょう)は、脊髄が外傷や炎症、腫瘍(しゅよう)によって損傷を受けたことで発生します。頚髄損傷(けいずいそんしょう)では、四肢麻痺(ししまひ)が発生します。四肢麻痺とは、頭を除いて、手足の麻痺です。胸・腰髄損傷(きょう・ようずいそんしょう)では対麻痺(ついまひ)になります。対麻痺は、主に両足の麻痺のことです。

脊髄が損傷を受けると、損傷部位以下の運動麻痺、感覚麻痺が起こります。加えて、膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)を合併症として伴うことがあります。そのため、受傷から時間が経っていても全身管理が必要となります。

受傷直後から損傷部位以下のすべての反射が消失します。これを“脊髄ショック”といいいます。脊髄ショックは、2~6週間ほど続き、脊髄ショック期を経て、多くは痙性麻痺(けいせいまひ)が発生します。

頚髄損傷は、四肢麻痺となりますが、第5頚髄損傷では、肩の動きを一部可能です。第6頚髄損傷では、肘と手首を曲げて動かすことが可能です。第7頚髄損傷では、肘と手首を伸ばすことが可能です。

胸髄損傷では、対麻痺となりますが、損傷した脊髄の高さによって、腹筋が使用できる程度が変わります。

腰髄損傷では、足も動かすことができます。

以上のように損傷部位が下位であればあるほど使える筋の量が増えます。

脊髄完全損傷と医師から診断された場合でも一部の筋の活動が認めれるという場合もあり、一概に治療上何もできないというわけではありません。残存している機能を高めることで日常生活が送りやすくなることもあります。

現在では、合併症の管理の進歩によって、社会復帰、就労も可能になっているケースも多くなっています。

リハビリについて

脊髄損傷のリハビリでは、急性期の“脊髄ショック”の時期は、全身状態の管理が重要な役割です。主に医師・看護師と情報を共有して、受傷された方の管理が行われます。

急性期の治療を過ぎると、残された機能を維持・向上し、可能な限り生活能力を獲得するためのリハビリが行われます。

動かせる範囲を増やし、生活面で活用できることを促しながら、頚髄損傷の場合には、車椅子での生活のを送りやすくすること、胸髄損傷では、車椅子、杖や装具を用いつつ、短距離の移動を目指していきます。腰髄損傷では、杖や装具を使用して歩行獲得を目指していきます。

完全損傷か不完全損傷かによって、現れる症状や残存機能(ざんぞんきのう)には個人差が大きいです。そのため、残存機能がどの程度確保されているのか、またその残存機能の回復する見込みについても評価が必要となります。

また、特徴的な運動麻痺として、痙性麻痺(けいせいまひ)がありますが、これは、身体が無意識に突っ張ってしまうという症状になります。繊細な作業や身体のコントロールが痙性麻痺により、難しくなると、日常生活に支障をきたしてしまうことも少なくありません。

脊髄損傷の受傷から時間が経っている場合でも、痙性麻痺の改善は残存している機能を高めること、動かし方の再学習によって筋の緊張を緩和していくことはリハビリによっても可能なことであり、重要な役割です。