上腕骨近位端骨折とリハビリについて

概要

上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)は、腕の骨の付け根部分の骨折です。
上腕骨近位端の場所は、上腕骨頭(じょうわんこっとう)から外科頸(げかけい)という部分までのことです。転倒して、腕を打ったり、ひねったりすることで受傷します。高齢者の方に多い骨折です。診断には、主にレントゲン検査を行いますが、補助的にCT検査やMRI検査を行います。

骨折者の多くは、60歳以上の骨粗鬆症を伴う高齢者です。男性に比べて女性のほうが多いです。

治療法の選択については、骨折の程度によって医師が判断をします。骨折部分の骨のずれ方が少ない場合は、腕を体に安定させて骨が治るのを待つ保存的な治療方法がとられます。手術では、髄内釘固定法(ずいないていこていほう)、プレート固定法、人工骨頭置換術(じんこうこっとうちかんじゅつ)があります。

転倒などによって肩を打った際に受傷することも多く、場合によっては肩関節脱臼を合併することもあります。そのため、転倒を予防するための取り組み方が重要になります。転倒予防のために必要なことは、認知機能を低下させないようにすること、習慣的に運動に取り組むことです。

リハビリについて

肩関節は、身体の中で最も可動範囲の広い関節です。高い場所に手を伸ばしたり、髪の毛を洗う時など、その可動範囲が必要になります。左右の肩の動きに左右差がない状態まで機能改善を図り、日常生活を円滑に過ごせるようにすることがリハビリの役割となります。

上腕骨近位端骨折の整形外科的治療は、保存療法、骨接合術、人工骨頭置換術があります。どの治療方法を選択されるかによって、リハビリ開始時期に多少の違いがあります。

実際のリハビリは、受傷または術後から約4週間以内では、安静機関を経て物理療法による骨癒合(こつゆごう)の促進、患部外トレーニング、コッドマン体操などが行われます。そして、8週間以内では、骨折部周囲の低い負荷の運動を行います。8週間以降では、通常の負荷での運動を加えつつ、関節包(かんせつほう)の伸張性向上、癒着剥離(ゆちゃくはくり)も積極的に行い、左右差の無い可動域の獲得を目指します。

骨折後の肩関節のリハビリで大事になることは、肩関節周囲の関節包(かんせつほう)及び靭帯(じんたい)の筋との癒着を最小限にすること、癒着の改善を図ることだと思います。肩関節の骨自体の安定性がもともと少ないことが特徴です。そのため、癒着していない状態で肩の周りの筋肉を円滑に働くように調整していくことが施術者の役割となります。