筋萎縮性側索硬化症(ALS)とリハビリテーション

はじめに

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉を動かす神経が障害されることで、筋肉が徐々に痩せて力が失われていく進行性の疾患です。本コラムでは、ALSの特徴や症状、リハビリテーションの重要性と注意点について解説します。

ALSとはどのような病気か

ALSの主な症状

症状の多様性

ALSの症状は多岐にわたり、発現の仕方も一定ではありません。多くの場合、手や指の動かしづらさから始まることが多いですが、話しにくくなったり、食べ物の飲み込みが悪くなる、あるいは足の筋力低下から始まる場合もあります。

上位運動ニューロン障害による症状

上位運動ニューロンが障害されると、筋肉の緊張を無意識にコントロールすることが難しくなり、筋肉の硬直や動作のぎこちなさ、細かな動きが困難になる「巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)」が現れます。これらの障害は、最初に口や喉、またはその両方に現れ、徐々に手足へ広がることが多いとされています。

下位運動ニューロン障害による症状

下位運動ニューロンが障害されると、脊髄の前角細胞や脳幹にある運動核、骨格筋へ伸びる神経の軸索が侵されます。その結果、筋力低下、筋萎縮、筋攣縮(きんれんしゅく)が手・足・舌などに見られることが多いです。

ALSの看護・リハビリテーションのポイント

呼吸・嚥下機能の維持
ALSのリハビリテーションや看護で最も重要なのは、呼吸機能の維持と、誤嚥を予防するための嚥下機能の維持です。全ての病期において、誤嚥による誤嚥性肺炎の予防が非常に重要です。また、発語障害が進行する場合もあるため、早期からコミュニケーション手段を確立しておくことも大切です。

ALSに対するリハビリテーション

リハビリの注意点

ALSに対するリハビリテーションで特に注意すべき点は、一般的な筋力トレーニングや高負荷の運動によって「過用性筋力低下(かようせいきんりょくていか)」が起こるリスクがあることです。そのため、運動負荷量の設定や決定には、疲労度だけでなく、血圧・脈拍・呼吸状態などを総合的に考慮し、適切な判断が求められます。

呼吸・嚥下機能維持のためのリハビリ

呼吸機能や嚥下機能を維持するためには、肩関節や胸郭の関節可動域訓練、筋肉への優しいストレッチなど、呼吸に関するリハビリを必ず実施する必要があります。

筋力強化訓練の工夫

ALSでは筋力低下の進行が一定ではないため、筋肉の活動が残っている部位には、低負荷での筋力強化訓練を行うことが推奨されます。

おわりに

ALSは進行性の疾患であり、患者さん一人ひとりの症状や進行度に合わせた個別的なリハビリテーションが重要です。適切なリハビリと早期の支援体制の構築が、患者さんの生活の質(QOL)維持に大きく寄与します。