はじめに
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉を動かす神経が障害されることで、筋肉が徐々に痩せて力が失われていく進行性の疾患です。本コラムでは、ALSの特徴や症状、リハビリテーションの重要性と注意点について解説します。
ALSとはどのような病気か
ALS(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)は、運動を司る神経である「運動ニューロン」が障害されることにより、筋肉が萎縮し、筋力が低下していく病気です。運動ニューロンには「上位運動ニューロン」と「下位運動ニューロン」があり、ALSではこの両方が侵されます。そのため、脳から筋肉への指令がうまく伝わらなくなり、筋肉の萎縮が進行します。運動ニューロンが障害される疾患の中では、ALSが最も発症率が高いことが知られています。
ALSの発症原因については、未だ十分に解明されていません。さまざまな説があり、人種や国によって遺伝的な要因が異なることも分かってきています。
ALSの主な症状
ALSの症状は多岐にわたり、発現の仕方も一定ではありません。多くの場合、手や指の動かしづらさから始まることが多いですが、話しにくくなったり、食べ物の飲み込みが悪くなる、あるいは足の筋力低下から始まる場合もあります。
上位運動ニューロンが障害されると、筋肉の緊張を無意識にコントロールすることが難しくなり、筋肉の硬直や動作のぎこちなさ、細かな動きが困難になる「巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)」が現れます。これらの障害は、最初に口や喉、またはその両方に現れ、徐々に手足へ広がることが多いとされています。
下位運動ニューロンが障害されると、脊髄の前角細胞や脳幹にある運動核、骨格筋へ伸びる神経の軸索が侵されます。その結果、筋力低下、筋萎縮、筋攣縮(きんれんしゅく)が手・足・舌などに見られることが多いです。
ALSの看護・リハビリテーションのポイント
ALSに対するリハビリテーション
ALSに対するリハビリテーションで特に注意すべき点は、一般的な筋力トレーニングや高負荷の運動によって「過用性筋力低下(かようせいきんりょくていか)」が起こるリスクがあることです。そのため、運動負荷量の設定や決定には、疲労度だけでなく、血圧・脈拍・呼吸状態などを総合的に考慮し、適切な判断が求められます。
呼吸機能や嚥下機能を維持するためには、肩関節や胸郭の関節可動域訓練、筋肉への優しいストレッチなど、呼吸に関するリハビリを必ず実施する必要があります。
ALSでは筋力低下の進行が一定ではないため、筋肉の活動が残っている部位には、低負荷での筋力強化訓練を行うことが推奨されます。
おわりに
ALSは進行性の疾患であり、患者さん一人ひとりの症状や進行度に合わせた個別的なリハビリテーションが重要です。適切なリハビリと早期の支援体制の構築が、患者さんの生活の質(QOL)維持に大きく寄与します。
