概要
腰痛には、特異的腰痛と非特異的腰痛と呼ばれる種類があります。特異的腰痛の特徴は、腰痛の原因が画像診断などによって明らかになる場合です。非特異的腰痛とは、腰部を構成する組織のどこかに原因がある場合の腰痛のことを指しています。特異的腰痛に比べて非特異的腰痛は多いです。つまり、原因が明らかにならない腰痛が多いということです。
腰痛が発生すると、痛みをかばう姿勢や動き方で日常生活を送ります。この非対称的な姿勢によって、身体のどこかに負担が集中することで他の身体の部位が痛むことも起こったりします。
特異的腰痛には、腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)などがあります。
非特異的腰痛には、急性腰痛症や慢性腰痛症が含まれます。
腰椎椎間板ヘルニアは、腰椎と腰椎の間にある椎間板(ついかんばん)という軟骨内の髄核(ずいかく)の位置が移動して、腰椎の外側の神経根(しんけいこん)を圧迫することで痛みや痺れ(しび)の症状が発生します。ヘルニアの語源は“逸脱する”ことです。本来、あるべき位置から外れてしまうということを意味しています。通常、腰椎椎間板ヘルニアの多くは、飛び出た髄核は6ヶ月程度で自然に吸収されて無くなります。しかし、後縦靭帯(こうじゅうじんたい)を破らない場合には、免疫細胞が働きにくくなり、ヘルニアの状態が続くことがあります。その場合、慢性腰痛に以降することもあります。特徴的な症状として、身体を前に倒した時に症状が強くなったりします。
腰部脊柱管狭窄症は、脊髄(せきずい)が通る脊柱管が狭くなることが原因で神経の血行不良によって足の痺れ(しび)や痛みが発生します。あまり腰痛自体は強くなく、歩行時の症状発生が多いです。安静にしていると症状がほとんどない場合もあることから、休憩と歩行を繰り返す間欠性跛行(かんけつせいはこう)が特徴的なのです。症状が悪化してくると休憩と歩行の時間が短縮し、短い距離の移動も困難に成ることもあります。背筋(せすじ)を伸ばすことで脊柱管が狭くなります。そのため、身体を後ろに倒した時に症状が強くなることが多いことがヘルニアとは違う特徴です。
腰の構造
背骨は、33個の椎骨(ついこつ)から成り立ちます。頸椎(けいつい)は7個、胸椎(きょうつい)は12個、腰椎(ようつい)は5個、仙椎(せんつい)が5個、尾椎(びつい)が4個です。腰には、腰椎、仙椎、尾椎が含まれます。成人の場合は、仙椎と尾椎は骨癒合(こつゆごう)して仙骨と尾骨を形成します。
背骨は全体として、脊柱(せきちゅう)を構成します。脊柱には、生理的弯曲があります。頸椎は前弯、胸椎が後弯、腰椎は前弯しています。この弯曲が崩れることで、様々なトラブルが引き起こされます。
一般的に腰を構成する骨は、腰椎、仙骨、尾骨の他に、腸骨(ちょうこつ)、恥骨(ちこつ)、坐骨(ざこつ)が合わさり、構成される寛骨(かんこつ)を含みます。
腰には、背骨全体についている脊柱起立筋と腹筋群、股関節周囲筋群という筋が運動の制御に関わっています。腰は、身体の中で中心に位置するため、全身的な動きの影響を受けます。そのため、手足の動きも腰の動きに関わっています。
特異的腰痛を引き起こす疾患
腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症という特異的腰痛を引き起こす疾患以外にも骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、脊椎分離症(せきついぶんりしょう)、脊椎すべり症などが挙げられます。
リハビリについて
腰痛に対するリハビリは、腰痛の原因が特異的か非特異的かによって、進め方が変わります。そのため、原因に対する関わり方が重要な視点となります。